MORYO通信 ~Urbs Communication~

本を読んで勝手にいろいろ言います

舞元啓介 スポーツとは、人生だ。『スローカーブを、もう一球 著 山際淳司』

私は横浜DeNAベイスタースのファンだ。

応援し始めたのは中畑政権の時。監督の全身を使った感情表現と、その大味な野球に私は魅了された。以降テレビやネットで試合観戦するのはもちろん、球場に足を運んで観戦することも多くなった。

 

野球のみならず、私はスポーツならば基本的に好き嫌いなく観戦できるのだが、野球以外となると、なかなか現地に行って楽しむほどの知識を持ち合わせていない。そのため、なかなか現地観戦に踏み切れない。まさか隣の人に、今のはどういうプレーですか? と聞くわけにもいかない。パブリックビューイングをしているスポーツバーという手もあるが、ライト層の人間からすると、ちょっとハードルが高い。

 

そんな時、家にいながら一緒に盛り上がってくれて、ルールの説明をしてくれる人がいたらなあ。最近、ラグビーが流行ってるけど、ルールがわからないし、周囲にも詳しい人はいない。誰か、楽しみながら、解説しながら、一緒に見てくれる人がいればいいんだけど、そんな需要に答えられるバーチャルYouTuberなんてまさかいるわけが……。

 

いる。

にじさんじ所属、舞元啓介氏だ。


【同時視聴】日本代表応援!予選突破へ頑張れ日本!【ラグビーW杯】

昨年行われたラグビーW杯で同時視聴を行い、プレーのたびにその意図やルールの説明をしてくれる。全編を通して丁寧な解説があり、初心者に配慮していることがわかる。その心遣い自体が初心者にはうれしい。曰く自分が少しでもラグビー人気の手助けになれば、とのこと。事実、この配信からラグビーに興味を持った、という声も多い。

この配信で日本は決勝トーナメントへ進むことが決定するのだが、直後に「こういう配信がしたかった」と涙ながらに語っている。ここから彼のスポーツに対する熱いものが感じ取れるだろう。

 

このほかにも、彼は野球やサッカー、格闘技等幅広いジャンルのスポーツで同時視聴配信を行っている。どれも初心者に対しての配慮がなされている。今後も同時視聴配信は定期的に行われると思うので、少しでも興味があれば彼と一緒に観戦してみるのもいいのではないだろうか。

 

 

さて、そんなスポーツに少しでも興味がある、という方にお薦めしたい一冊が、山際淳司著『スローカーブを、もう一球』だ。

こちらはスポーツを題材としたノンフィクション短編集になっている。収録されている作品に、『江夏の21球』があり、こちらの名前を知っている方は多いのではないだろうか。

 

表題作(高校野球)や『江夏の21球』(プロ野球)ほか、ボクシング、ボート、スカッシュ、棒高跳びと、収録作のスポーツのジャンルは多岐にわたる。しかし、登場するすべてのスポーツマンたちは、それぞれ形は違えど真剣にスポーツと向き合い、他のアスリート、周囲の環境、そして己と戦っている。そこだけは、競技が変わっても、変わらないただ一つの事実だ。

 

ただ、この作品が書かれた時代が今と違うこともあり、一部のエピソードには「これは美談なんかじゃない」と憤られる方もおられるかと思う。

 

最初に載っている『八月のカクテル光線』は高校野球のエピソードだ。

1979年8月16日、箕島高校VS星稜高校。両先発投手が200球以上を投じる熱戦だった。体罰のエピソードや、熱が出てもグラウンドに立つ選手も登場する。

はっきり言って、今こんなことが現実に起きれば、ほとんど許されない。甲子園大会と言ったって、そもそもは部活動だ。まず生徒たちの体調を第一に考えなくてはならない。体罰なんかもってのほかだ。

 

しかし、そういった過去の出来事を負の遺産として単純に切り捨てることに私は賛成できない。私には彼らの野球人生を、何も知らないままに否定するということがどうしてもできない。

確かに未来のことを考えればこのようなエピソードは負のものとして扱いたくもなるだろう。それでも、これは当時の彼らが自ら望んで歩んだ道だった。彼らの野球人生は、絶対的に否定されるべき過去なのだろうか? 私はそう思いたくない。彼らは彼らの歩んだ道に、胸を張っていてもらいたい。

 

スポーツとは、人生だ。

そこにドラマはない。それを知り、見る人がいて、初めてドラマになる。私たちは、彼らの人生を少しだけのぞかせてもらっているだけに過ぎないのだ。

 

今後の球児たちは、前述のような体に無茶をさせるような野球から脱し、球数制限やタイブレーク導入など、新しい規則の元でプレーをすることになる。過去の高校野球界と現在の高校野球界は、別物と言ってもいいほど変わろうとしている。

だからと言って、過去と現在、どちらが良いとか悪いとか、そういったことを言うのは止めよう。万物は変容する。変わらないものなど存在しないのだ。彼らはまた新しい野球人生を送り、我々もそこに新しいドラマを見出すだろう。それを存分に楽しませてもらおうではないか。

そして山際氏のように、彼らの人生を書き残してくれる人がいるのならば、彼らが見せてくれたドラマを、私たちは決して忘れることはないだろう。

 

他にも山際淳司氏はノンフィクション作品を多く発表されており、そこにはそれぞれのスポーツマンたちの歩んだ人生が記されている。これらもぜひ手に取っていただき、あなたの中で彼らを再び輝かさせていただきたい。

 

 

最後になるが、舞元氏の魅力はスポーツ同時視聴だけではないことをお伝えしておく。ホロライブ所属の大空スバル氏とコラボ配信を行ったり、ジョー・力一氏とラジオ配信をしたりと、活動の幅は広い。

唯一、歌配信が少ない印象があるが、以前紹介したジョー・力一氏とともに、『水曜どうでしょう』のエンディングテーマ、『1/6の夢旅人2002』を歌唱している。


【歌ってみた】1/6の夢旅人2002/樋口了一 (Covered by 舞元啓介&ジョー・力一)【舞元力一】

こちらでは珍しく(失礼)全編を通して彼のかっこいい姿が見られるので、併せてお薦めしておこう。

 

舞元氏は2019年、台風被害で農家としての収入は0だったという。ライバーの収入で急場を凌いでいるという彼には、なんとかこの一年、そして来年以降も踏ん張って活動を続けていっていただきたい。彼の人生にも、私たちはドラマを見出しているのだから。

頑張れ舞元。負けるな舞元。でも小夜ちゃんから下の名前で呼ばれてるのは許さないからな。

//上に戻るボタン