MORYO通信 ~Urbs Communication~

本を読んで勝手にいろいろ言います

佐藤ホームズ S.Hホームズは探偵なのか? 『QED ベイカー街の問題 著 高田崇史』

私の文芸作品の目覚めはいつだったか。

それは元をただせば『かいけつゾロリ』とか『大どろぼうホッツェンプロッツ』なんだけれども、しっかりと小説と呼ばれるものを読んだのは、『探偵ガリレオ』だったように記憶している。

当時小学生だった私は、親がミステリ好きという影響もあって、よくサスペンスやミステリードラマを見ていた。そして私はガリレオをいたく気に入り(柴咲コウが可愛いので)、親の文庫本を引っ張り出してきて読み始めたのだった。そしたら原作では北村一輝ばっかり出てきてキレちらかした記憶がある。

 

さて、そんなミステリーの歴史を紐解いていけば、ある一人の探偵にたどり着く。

 

その名はシャーロック・ホームズ

アーサー・コナン・ドイルが生みだした世界で最も有名な探偵だ。

 

彼を愛する人々はシャーロキアンと呼ばれ、現代においても彼を愛する人は後を絶たない。全てのミステリ作家たちはホームズ及びドイル(作者はワトソンだ!という声もあるが)を尊敬していると言っても過言ではないだろう。最近ではFGOで偉人扱いされているのも記憶に新しい。

また、彼の名を冠した作品は非常に多く、日本では『三毛猫ホームズ』『秘密警察ホームズ』『探偵オペラ ミルキィホームズ』などが見られる。

 

そして同じく、ホームズの名を持つバーチャルYouTuberが存在する。

佐藤ホームズ氏である。

 

彼はVTuber情報番組「週刊MoguLive!」 でキャスターを務めている。

また、ほかにも毎週、その一週間に起こったVTuber界隈の出来事を3分にまとめた動画を上げている。やはり自分の身一つでは全体を追うことが難しいので、こういったものを上げてくれるのはファンとしてはありがたい。


【1/19~1/25】3分でわかる!今週のVtuber界【VTuberニュースまとめ】

 

しかし、彼の活動を見てみると、あまり探偵っぽくない、とは思わないだろうか。

 

そう思った方は、ちょっと考えてみてほしい。彼を探偵っぽくない、と思ったのはいったいどの部分だろう。

それは、「探偵のくせに推理をしていない」というところではないだろうか? それは正しい感性だともいえるが、正しくない感性だともいえる。

 

「探偵」という語は、広辞苑によれば「ひそかに他人の事情や犯罪の事実を探ること、またその人」「ひそかに敵の内情を探る者」とある。また、Wikipediaによると、その始まりは「裏の世界をよく知る元犯罪者が、警察の側について活動をしたこと」とされている。

つまり、彼らの仕事は、佐藤ホームズ氏のように情報収集をすることなのである。個人的には「探偵」ではなく、「忍者」と訳した方が適当なのではとも思う(日本語の探偵も語源は密偵なのでやはりそれに近い気がする)。

 

何が言いたいかと言うと、「推理」をする探偵は現実には存在しないということだ。

 

では、探偵が「推理をする」というイメージを持つようになったのはいつからか? それはやはり、シャーロック・ホームズの出現によるものであろう。

 

時は1887年、『緋色の研究』で彼は華麗なるデビューを飾る。特筆すべきは、彼の職業が「顧問探偵」であったところだろう。これが医者や学者だったならば、ここまで神格化されることはなかったのかもしれない。そういった知識人と比べ、探偵はほとんど一般人と変わらない。そんな彼が豊富な知識と柔軟な思考力をもって殺人事件を解決する姿に人々が惹かれた、という考え方もできるだろう。

 

登場以降、彼は名推理に次ぐ名推理を披露し、その人気と地位を確固たるものにした。そして同時に現在につながる探偵のイメージを作り上げたのである。

ひいては、エルキュール・ポアロをはじめ、続々と推理小説の世界には「探偵」を職業とする者たちが現れ、殺人事件を解決していくようになる。そのうち、刑事や猫でさえも、推理をもって殺人事件を解決する場合、紹介される際には「この作品の探偵役は~」と説明されるようになった。

 

佐藤ホームズ氏はしっかりと探偵としての仕事をしている。にもかかわらず、探偵らしさを感じることが難しいのは、後者の「探偵」のイメージが一般に広まっているからにほかならない。

 

シャーロック・ホームズ

たった一人で、「探偵」を「推理する者」という概念に変えた男。

彼のもっとも評価すべき点は、そこなのかもしれない。

 

 

ところで、その原点及び聖典とも呼ばれる『シャーロック・ホームズシリーズ』であるが、数々の違和感や矛盾点を内包しているということは皆さんご存じだろうか?

ホームズは『最後の事件』において、悪の親玉モリアーティとの決闘で滝つぼに落ち、死亡した……と思わせておいて、暫く身を隠したのちにロンドンに再出現する。

しかし、再出現後の彼は、以前に比べて、コカインを吸わない、ヴァイオリンを弾かないなど、どこか人が変わってしまったようになるのだ。まあ、数年もあれば性格も変わるさ、と思われるかもしれないが、それについて非常に面白い考察をしている推理小説がある。

 

高田崇史著『QEDイカー街の問題』である。

bookclub.kodansha.co.jp

あらすじは、シャーロキアンが集まるクラブ「ベイカー・ストリート・スモーカーズ」で次々と会員が殺されていき、かつ彼らはダイイング・メッセージめいたものを残していた。主人公の崇と奈々はその事件に巻き込まれ、やがてそれは前述の『シャーロック・ホームズシリーズ』の持つ謎と複雑に交差し、衝撃の結末を迎える、というもの。

 

こちらでは大胆にもシャーロック・ホームズの常識を覆すような説が唱えられている。シャーロキアンの方々はもちろん、そうでない方でも非常に楽しめるものとなっているので、多くの推理小説愛好家の方々にはぜひ手に取っていただきたい一冊だ。

 

こちらはシリーズ作品であり、他にも、主に日本の古典を絡めて、本作のように大胆な考察を取り入れた推理小説が多々発表されている。どれもかなりのクオリティであるので、併せてお薦めしたい。

特徴としては、作中で非常にうんちくが多いことが挙げられるだろう。内容の半分近くが殺人事件のことよりも、考察する対象についての説明になっている。そのため、高田氏の著作を読めば、そういった古典に多少なりとも詳しくなれる。学生の方々や、より多くの知識を求めたい、という方にもおすすめである。

欠点と言えば、ちょっと表紙が怖いので、読みかけのまま枕元に置きっぱなしで寝て、夜中ふと目が覚めてスマホの電源を入れたときに、表紙が見えて「うわっ!」ってなっちゃうところくらいだ。

 

なお、高田崇史氏は講談社BOOK倶楽部に特設ページがあり、そちらをご覧になると、自分の興味がある分野の『QEDシリーズ』及びその他著作が見つけやすいと思うので、併せて紹介させていただく。

book-sp.kodansha.co.jp

 

 

最後に、ホームズ氏は初期に考察動画をアップしており、しっかり推理をされていたことをお伝えしておきたい。記事中で、まったく普通の探偵の活動しかしていないかのように紹介をしたことを、ここでお詫びさせていただく。申し訳ありませんでした。


Vtuber1000人の「名前の傾向」を考える【佐藤ホームズの考察】

 

彼はTwitterの自己紹介で「興味をもつチャンス」を作る事をテーマに活動していると述べている。当ブログも、誰かの興味をもつチャンスになってくれていると非常にうれしい。佐藤ホームズ氏を見習い、今後も精進して活動していきたいと思う。

 

まずはじめに興味をもつ対象として、『QEDイカー街の問題』で提唱された説に納得するのみならず、自分なりに『シャーロック・ホームズシリーズ』の謎を推理してみるのはいかがだろうか。

真実はいつも一つ。でも、正解はひとつ!じゃない!!

www.youtube.com

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