MORYO通信 ~Urbs Communication~

本を読んで勝手にいろいろ言います

俳句も熱いけど短歌だって熱いぞ! 短歌に絡めた作品を紹介したい。

プレバト!!」の影響もあってか、俳句が熱いという印象がある今日この頃の日本列島。古い時代から続く日本の伝統が世に再び広まっているというのは、もろ手をあげて喜びたい事柄である。

 

しかしそれならば、短歌ももう少し注目されてほしいものだ。

 

短歌は俳句よりも入りやすい、と個人的には考えている。

理由としては、まずは季語を用いなくてもいいという点が挙げられる。俳句であれば四季に合わせて季語をいれなければならず、しかも即興で詠むとなればそれらを覚えておく必要がある。それがないので、たとえ初心者であったとしても、ふとした瞬間にも詠むことができる。

また、文字数が多いのも初心者がやりやすいポイントだろう。「プレバト‼」を見ていても思うが、俳句はとにかく文字数が少ないのでなかなか素人がいきなり詠もうと思ってもうまくいかないことが多い。その点、短歌ならば14音も余分に使える。これはやはり初心者にとってみてもやりやすいだろう。

 

そんなわけで、今回は短歌集と、それに関連した小説を紹介させていただきたい。

 

まずは言わずと知れた短歌集、俵万智著『サラダ記念日』だ。

この歌集はとにかく有名であり、短歌を過去のものから現代のものに引き上げたと言っても過言ではないだろう。20代以下の方ならば教科書で俵氏を知ったという方も多いのではないか。

本書は表題の作品でも感じることと思うが、「え、そんなことでいいんですか」と言ってしまいたくなるような、なんでもない日常の中の一瞬を詠んだものが多く収録されている。現代短歌のパイオニア的な存在である本書。短歌初心者はまずはこれから入るのが間違いないと思われる。

 

さて、続いては上記のパロディ、筒井康隆著『薬菜飯店』に収録されている『カラダ記念日』である。

「この刺青いいわ」と女(スケ)が言ったから、七月六日はカラダ記念日ーー。

『サラダ記念日』は有名であるがゆえに、そのパロディもたくさん存在する。しかしこれは筒井氏の作品ということで、その時点で他のパロディ作品とは一線を画しているような感じがある。一貫してヤクザがテーマであり、メチャクチャだな! と言えるような歌がたくさん収録されている。

この作品の面白いところはと言えば、本書の解説が俵万智氏であるところであろう。本人によってパロディされた歌の解説がされるというのは、なんだかその構図だけで面白く感じてしまう。

表題作含め、他の作品も面白いものばかりなのでぜひ手に取っていただきたい一冊である。

 

続いては趣向を変えて、短歌が重要なキーになっている作品、連城三紀彦著『戻り川心中』だ。

こちらは花をテーマにした短編ミステリー集であり、表題作ほか5編が収録されている。どれも珠玉のものとなっているので、個人的に強くお薦めしたい作品だ。

表題作である『戻り川心中』は自殺した歌人・苑田岳葉をめぐる物語である。作中に登場する短歌を含め、本作は連城氏の美しい言葉遣いがとりわけ光っている。彼は普段から美しい文章を書く作家であり、もはやそれは芸術の域に達していると言ってもいい。文芸とはこういうものを指すんだな、というものをありありと見せつけられた。

また、ミステリーとしてのトリック、ストーリーも秀逸であり、詠み終えたと同時に、様々な感情のこもったため息をつくことは請け合いである。「短歌には興味がないけど……」という方でも面白く読み進めることができるはずなので、ぜひ一度読んでみていただきたい。

 

最後はまたミステリーからひとつ。高田崇史著『QED 百人一首の呪』である。

こちらは第9回メフィスト賞に輝いた作品であり、著者のデビュー作である。

みなさんも百人一首の存在はご存じだと思うが、収められている百首がいったいどのような基準をもって選ばれたのかはご存じだろうか? そんな誰もが気にも止めなかったであろう疑問を、この作品は解決してくれる(あくまでも一説としてだが)。ついでに殺人事件も解決してくれる。

本作の嬉しいところは、百人一首に限らず和歌というものについて懇切丁寧に解説されていて、そういったものの蘊蓄が豊富に獲得できる部分であろう。本作はシリーズものであり、ほかにも六歌仙をテーマにした作品などがあるので興味のある方はそちらも手に取ってみてほしい。ミステリーと古典が好きな方にはぜひお薦めしたい一冊だ。

 

 

さて、この世界にはたくさんの短歌と、それをモチーフやテーマにした作品がある。

外出を控えるようにと叫ばれている昨今、このような作品たちに新しく触れてみるというのもいいのではないだろうか。短歌というものはそれほどハードルの高いものではないと、これらの作品で理解できるはずだ。

なんて言いながら、私もそれほど多くの短歌に触れているわけではないので、もしお薦めの歌集や作品があるならば、こっそり教えてほしく思います。

 

「この記事がいいね」と君が言ってくれたなら……。

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