MORYO通信 ~Urbs Communication~

本を読んで勝手にいろいろ言います

夜見れな 一流のマジシャンとは 『青天の霹靂 著 劇団ひとり』『11枚のとらんぷ 著 泡坂妻夫』

ハンドパワー。

私の幼少期は、マジック特番がよくゴールデンタイムで放送されていたけれど、今はあまり見なくなってしまった。マリックはたまに見かけるけど、セロとかどうしてるんだろう。地方の営業とか行ってるのかな。

 

 

マジックといえば、にじさんじ所属のバーチャルライバー夜見れな氏が思い浮かぶ。

黒と白のアシンメトリーな髪、ゴスロリ風の服。しかしてその正体は、アイドルマジシャンなのである。でも、アイドルマジシャンって何? グラビアもやってる御寺ゆきとかがアイドルマジシャンなんだろうか。あとは「てじなーにゃ」の山上兄弟もある意味アイドルか? プリンセス天功は……たぶん違う。まあ、アイドルマジシャンはきっとこれから夜見氏が確固たる地位にしていくのだろう(丸投げ)。

 

さて、夜見氏は平日の昼の時間帯にARKやマインクラフト、APEX等の配信を長時間行うなど精力的に活動している。

マインクラフト内では高所で作業する緑仙氏の目の前にいきなり出現したり、透明化ポーションを飲んでドラゴンの頭を装備し、ニュイ・ソシエール氏を追いかけまわしたりといった悪戯マジックを行っている。

 

ただ、そういったマジックを披露してくれる機会はなかなか少ない。Twitterの自己紹介にもマジシャンの練習中であるとの記載がある通り、彼女はいまだ修行中の身であるのでこれは致し方ない。

 

それを見てしまうと、「配信よりマジックの練習をした方がいいんじゃないのか?」と思ってしまう方も中にはおられるかと思う。

しかし、配信をする、つまり喋るということはマジシャン、手品師にとって最も重要であることの一つだ。

 

それは「手品」という文字を見れば一目瞭然である。そう、「手品」の中に「手」は一つしかないが、「口」は三つも入っている。マジシャンというのは、手の三倍、口を使わなければならないのだ。

一流のマジシャンとは、一流の喋り手でなくてはならない。

マジシャンとして成功している人物は、そのほとんどが話術にも長けているのだ。そのために、長時間配信を行い喋り続けるというのはなかなか理にかなっているとも言えるだろう。

 

そんな「手品」に対する一文だが、私自身が考え付いたものではなく、とある小説の中から引用させていただいたものだ。

その小説というのが、劇団ひとり著『青天の霹靂』である。

本作はお笑い芸人である劇団ひとり氏の二作目にあたる長編小説で、主人公は中年のマジシャン(マジシャンとしての技量も話術もいまいち)である晴夫だ。彼は警察からホームレスだった父親が亡くなったと連絡を受け、彼が生前住んでいたというダンボールハウスに向かい、青天の霹靂に遭うのであった……。

本作は著者がお笑い芸人であることもあって、コミカルな部分が多くみられる。しかし、それ以上に晴夫と父親との絆が巧みに描かれていて、ゴッドタンでキスを我慢している人間が書いたとはとても思えない素敵な小説となっている(失礼)。芸人が書いたという色眼鏡は抜きにして、ぜひとも手に取っていただきたい一冊だ。

 

 

マジシャンに絡めて、今回はもう一冊紹介させていただきたい。マジックを題材にした小説は数あれど、本職が書いている作品はなかなか少ないはず。

『11枚のとらんぷ』は、奇術師である泡坂妻夫が著した作品だ。

こちらはミステリー小説である。あらすじは、マジックショーの途中で出演者の女性が姿を消し、マンションの自室で殺されている姿が発見され、その周りにはさまざまな道具が散らばっていて、それは『11枚のとらんぷ』というマジックを小説風に解説、紹介する本の中に登場するものであった……というもの。

 

この作品の面白い部分は、作中作『11枚のとらんぷ』がまるまる収録されており、こちらだけでも成立するという点だ。前述の紹介通り、マジックのタネを小説風に解説していくという画期的なネタバラシの方法は、マジック未経験者にとっては専門書よりもわかりやすいだろう。ここだけでも一読の価値がある作品と言っても過言ではない。

泡坂氏は、ほかにも数々の奇術、マジックを題材にした推理小説を書かれている。作品中には本職ならでは、といった記述も多く見られ、マジックに興味がある方、あるいは推理小説に興味がある方、どちらにも楽しめるものになっているはずだ。

 

また、『11枚のとらんぷ』冒頭で行われるマジックショーはかなりグダグダとした内容になっている(小説自体が、ということではなく、ステージの内容がグダグダ)。それはマジックショーに登場する人物たちはマジキクラブという奇術同好会の会員であり、ほとんど素人同然だからである。この部分は、後述の夜見氏のマジックショーとどこか重なる部分があり、そちらを知っている人間からすると、既視感も込みで笑えるのではないだろうか。

 

ミステリとしてもマジック小説としても楽しめる『11枚のとらんぷ』。ぜひ一度手に取っていただきたい。

 

 

最後になるが、夜見氏が以前行ったマジックショーを紹介しよう。


【マジックショー】世にも恐ろしいマジックショーが始まるよ!【でびでび・でびる/夜見れな】

こちらでは同じくにじさんじ所属のでびでび・でびる氏と共に茶番マジックショーを行い、切断マジックなどの盛大なマジックで視聴者を楽しませた。第二回のアナウンスは現在されておらず、未定となっている。

 

マジックショー以外にも、企画やコラボ等で積極的に活動している夜見れな氏。きっとそこで培ったもので、一段とパワーアップしたステージを我々に見せてくれるはず。第二回のマジックショーでは、セロばりの「Surprise!」を我々に提供してくれるに違いない。

その幕が開く時を、我々は期待して待とう。しばしの間、ご歓談を。

//上に戻るボタン