初めてタバコを吸った。
家族に喫煙者はいるのだが、私は今まで喫煙というものとは無関係であった。中学時代の友人はちょっと悪ぶってタバコをふかしたりなんかしていたが、変なところで良識があるらしく、私には一切勧めてこなかったし、私も欲しがるようなことはしなかった。
そんな私がなぜ今になって初めてタバコを吸ってみようと思い立ったのかというと、単純に「そういえば俺ってタバコ吸ったことないな、どんなもんなんやろ」という好奇心が芽生えたためである。それ以上でもそれ以下でもない。
ただそれだけの理由だが、思い立ったが吉日ということでタバコを買って吸ってみた。せっかく初めてタバコを吸ってみたのに、一人で「はえ~」となるだけでは勿体ないので、今回は人生で初めてタバコを吸った所感を書いていこうと思う。
タバコを買ってみる
「タバコ、吸ってみよう!」と思い立ったはいいが、初心者ゆえ何を吸えばいいのかわからない。とにかくタバコは銘柄が多いのだ。
調べたところ、ウィンストン・キャスター・ホワイトというものが初心者におすすめの銘柄であるらしい。私はコンビニに向かい、レジ奥にある棚を眺めた。
私は困惑した。
同じ箱が違う番号で入ってるじゃないか。いや、よく見たら大きさが違うものもある。たぶん、大まかな銘柄は同じで、細かな部分が違うのだろうと私は理解した。そこで私は、「一番スタンダードなやつは同じ箱の中でも最初の番号のヤツだろう」と思って、ウィンストン・キャスター・ホワイトの箱でもっとも若い番号のものを頼んだ。
ライターと合わせて570円。まあこんなもんだろう。
一番若い番号のタバコはこれだった。怖いことが書いてある。
さて、問題はどこで吸うか、である。
コンビニ横にも喫煙スペースはあるのだが、初心者がいきなり喫煙スペースで知らないおじさんと灰皿を囲むというのは些かためらわれる。初めて吸うのだから、きっと失敗もするだろう。なるべく一人で吸いたかった。
幸い家に灰皿があるので、灰の処理に困ることはない。そのため、家で吸うのがもっとも他方に迷惑をかけないであろうと私は考え、帰宅の途に着いた。まさか人生でタバコを吸うために帰路を急ぐこととなるとは、昨日までは考えもしていなかった。
タバコを吸ってみる
家に帰ってタバコを取り出してみる……あれ、どこから開けるんだこれ。私がよく知っているタバコは、パカっと開くポッキーの容器みたいなヤツである。でもこれは違う。そう、私はソフトタイプのタバコを買ってしまったのだった。
タバコのパッケージにはボックスとソフトの2種類がある。ボックスというのが前述のポッキーのパッケージのように開くタイプのもので、ソフトは画像の通りバターを包んでいる銀紙のようなものに、ラベルが被されているものだ。
おそらく主流なのはボックスであり、私もボックスのつもりで買ったのだが、今目の前にあるのはソフトのウィンストンである。やはりリサーチ不足が響いてしまった。勘で買うものではないね。
しかし買ってしまったからには仕方がない。それに、ソフトのパッケージはいつ無くなるかもわからないので、経験をするいい機会だと思うことにした。いざとなれば、最後の一服をしようとしてタバコが入っていないことに気づき、パッケージを握りつぶすという遊びもできるというものだ。
一部を切り取って開ける。真ん中の紙は破いてはいけないらしい。
画像のようにまずは開けてみる。けっこう、みっちりとタバコが詰まっていて、セブンイレブンの弁当もこれくらい頑張ってくれよなんて思った。
取り出し方は映画の見よう見真似でやってみたらうまくいった。トントン、と上部の切り取っていない部分を叩いてやると、何本かが浮いてくる。それを指で摘んでやれば、簡単に取り出せる。
タバコ。フィルター黄色くないんだ……と謎のショックを受けた。
タバコはやはり軽い。重さなどあってないようなものだ。昔はもっと葉っぱが詰まっていたから重かった、なんて聞くけれども、今となっては確かめる術はない。
口に咥えて、いざ実吸。
ライターが硬い! でも気合で点ける。小心者なので、火力は一番小さくしてある。青くのぼった炎にタバコを近づけてフィルターから息を吸ってやると、先端から白い煙が。無事点火に成功した。
フィルターから煙を吸い込んでみる。うーん、よくわからない。息を吐くと白くなっているのでちゃんと煙は吸っているんだろうが、味があんまりしなかった。煙の量が足りないのか? と思って強く吸いこんでみたらむせた。やっぱり喫煙所で吸わなくて良かった。
匂いは確かにタバコのそれである。また、ウィンストン・キャスター・ホワイトはバニラ風とのことで、バニラっぽい匂いもした。しかし前述の通り別段甘味などは感じなかった。
面白いなと感じた点は、吸ってみるとその分タバコが短くなって、灰になっていくところだ。当たり前だし、何度も他人が吸うタバコでそれは見たことがあったのだが、やはり自分でそれをコントロールできるとけっこう面白い。
しかし、短くなるにつれて火種の煙、いわゆる副流煙も近づいてくる。半分以上吸ったところで、副流煙をモロに吸い込んでしまって鼻全体がツーンとなった。なるほど、喫煙者がフィルターすれすれまで吸わない人も多いのはこれも理由の一つなんだな、と一人納得した。
その辺りで私はタバコを灰皿に押しつけ、火を消した。
感想・まとめ
結論からまず言わせてもらうと、「こんなもんか」といった感じだ。
味がよくわからず、思ったよりも「タバコを吸ってるな!」という実感は湧かなかった。幼いころから副流煙にまみれて育ったため、そこそこ煙に対して耐性があったせいもあるのだろうか。家族に喫煙者がいなかったならば、もっと過敏に匂いや味に反応できたのかもしれない。
今回初めてタバコを吸ってみて、あまり有益なことはなかったが、500円程度で新体験をできたということ、怪我の功名とはいえ、ソフトという次元大介ごっこができるタイプの箱のものを選べたことはよかったと言える。
気になった点も特にはない。たかだか一本吸っただけで体に急速な変化が起こるわけでもない。ただ、吸った後は痰が絡んだ。これはちょっと嫌だったかな。
さて、余ったタバコはどうしようか。とりあえず何らかの資料として使っていこうと思う。もう吸うことはないかな。私は喫煙初日にして、禁煙に成功したのであった。どうやら『最後の喫煙者』にはならずに済みそうである。