MORYO通信 ~Urbs Communication~

本を読んで勝手にいろいろ言います

轟京子に見る若さの輝き 『ロッキン・ホース・バレリーナ 著 大槻ケンヂ』

前回、ジョー・力一氏にハマっているということを書いたが、私にはもう一人積極的に配信を見ているバーチャルライバーがいる。

 

にじさんじ所属、轟京子。

 

彼女は服飾の専門学校に通っている女子大生で、同じ事務所に所属するバーチャルライバーのコーディネートを考える配信などを行っている。


【ギャルが】LOKI's COORDINATE【服をコーデする】

 

このような配信だけ切り取ってみると「あら素敵なお嬢さんね」で終わってしまうかもしれない。しかし、スライムを自作したり、WWEサウスパークのゲームをプレイしたりと、一般的な女子大生と比べるとやや独特とも言える趣味を持っていて、そういった点が彼女の大きな魅力だといえるだろう。

 

ただ、私が彼女に惹かれたのは正直そういった部分ではない。

もちろんそのような非凡なセンスも含めて好きなのだけれど、それはスパイスとか副菜的なものなのだ。ラーメンで言うところのメンマとかチャーシューとか、卓上のGABANのような存在で、麺やスープのようなものではない。

 

では、私が感じた彼女の魅力の根幹たる部分はなんなのかといえば、いい意味で彼女が「等身大の女の子」であるところだ。

 

京子氏は現在二十歳で、自他ともに認める「ギャル」だ。実際に配信を見ても、「ああ、今ドキの若い女のコはきっとこんな感じなんだろうな」という瞬間が多くある。

ちょっと抜けていて、うっかりミスをしてしうところ。そんな状況でも、「まあなんとかなるっしょ!」という軽いノリ。それでもしっかりと「自分のやりたいことをしている」姿……。

そこに、私は自分にないエネルギーを感じ、力を分けてもらったような気になる。

 

そんなエネルギーを感じさせてくれる小説がこの世にはたくさんあるのだが、彼女に近しい雰囲気の作品をひとつ上げるとすれば、大槻ケンヂ著『ロッキン・ホース・バレリーナ』だろうか。

 

大槻ケンヂ氏と言えば、筋肉少女帯のボーカルとして有名で、歌手やアーティストというイメージが大きい方ではなかろうか。 実際、彼が小説を書いていることを知っている人は少ないのでは? とも思う。

私も、はじめのうちはゲーノージンが片手間に書いた小説なんて……と思っていたのだけれど、読んでみれば素敵な「青春パンク小説」なのだ(偏見はよくないですね)。

 

この作品の主人公は、女の子とセックスすることで頭がいっぱいの、耕助という十八歳のバンドマンだ。彼のバンド「野原」は全国ツアーを慣行し、車で一路名古屋へ向かうが、その道中にひょんなことからゴスロリ姿の少女、七曲町子を乗せていくことに。物語はやがてバンドのデビュー、耕助と町子、そしてマネージャーの得さんの過去を巻き込みながら、佳境に向かっていく。

 

十八歳で夏でバカだった。

という書き出しでこの小説は始まる。そして、この小説のストーリーは、この一文に集約されるといっても過言ではないだろう。

 

耕助と町子はどちらもバカだ。しかし彼らは作中でメキメキと成長していく。自分が好きなこと、もの、人に対して夢中になって、全力で突っ走っていく。

その姿に、読者は懐かしさと羨望を覚え、そこから希望を感じ取って、自分自身の感情と同化させる。

 

若い人間の放つ輝きの中にある希望を、まるで自分自身の希望かのように感じ取るのだ。

 

おじいちゃんやおばあちゃんが、よく若者と会った時に「若さを分けてもらう」なんて言い回しをするけど、それは決して勘違いじゃない。実際に若者と触れ合うことで自分がポジティブな感情を持つことができたならば、それは若さの輝きを「分けてもらっている」に等しい。

 

そんな若さゆえのエネルギーだが、京子氏から感じられるそれも同じものだ。本人はエナジードリンクバーチャルライバーを目指していると言っているけれども、もう半ばエナジードリンク的な存在になっていると言ってもいいだろう。

 

前回紹介した力一氏と同じく、京子氏も「にじロック」というロックフェス企画に参加している。力一氏とは対照的に、正統派なステージになっている。こちらもぜひご覧いただきたい。


【#にじロック】邦ロックリレー配信02 ver.轟京子【にじさんじ/轟京子】

曲目にWANIMAがあるし、まさに若くてバカ! って感じがする。いや、褒めてるんですよ、これ。

 

京子氏は、十八歳ではないけど十分に若い。きっと今年の夏が終わるころには、二十歳で夏でバカだった、と思わせてくれるんじゃないだろうか。

 

2020年、轟京子氏のさらなる飛躍を願いたい。 

  

なお、大槻ケンヂ氏の所属するバンド、特撮から『夏盤』という『ロッキン・ホース・バレリーナ』のイメージアルバムが出されているので、そちらも併せてお薦めしておく。

夏盤

夏盤

  • 特撮
  • ロック
  • ¥1681
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