MORYO通信 ~Urbs Communication~

本を読んで勝手にいろいろ言います

癒月ちょこ 保健室は怪我を治すためだけの場所ではない 『保健室の死神 著 藍本松』

2月14日、聖・バレンタインデー。

男たちが女性から貰ったチョコレートを奪い合い、15日の0時時点で一つもチョコレートを所持していなかった者は首輪に仕込まれた爆弾が爆発して死ぬというデスゲームである。

 

というのは戯言であるが、バレンタインデーといえば、ホロライブ所属癒月ちょこ氏が思い浮かぶ。

誕生日が2月14日であり、「ちょこ」という名前もチョコレートが好きであることに由来する。ファンアートタグも「しょこらーと」であり、挨拶にも「ちょこん」「おつかれいと」を採用するなど、徹底してチョコレート推しであることが伺える。

 

そんな彼女の職業は、魔界学校の保険医だ。

その職権を乱用して同業者にセクハラを職業を活かして、「身体測定」と称し、ゲストの体格や衣装のディティールを紹介するほか、学力や心理テストを行い、ゲストの今までにない面を引き出してくれる配信を行っている。

ちょこ氏のファンだけでなく、ゲストのファンにとってもうれしい配信になっている。しょこらーとではない読者の方もおられるかもしれないが、推しがゲスト出演している回があればぜひご覧いただければと思う。


【ホロライブ身体測定】噂のホロライブのドラゴン診察します!【ホロライブ/桐生ココ/癒月ちょこ】

 

さて、ちょこ氏の職業である「保険医」だが、皆さんはどのようなイメージをお持ちだろうか?

もちろん、ちょこ氏のような色気が限界突破×サバイバーな女医さんを思い浮かべる人も多いと思うが、実際のところ、そのような保険医はなかなかお目にかかれない。もちろん若く溌溂とした方もいないではないが、どちらかと言えば慈悲深い笑みを湛えた、優しげなおばさまが多い印象がある。

 

そして、そんな保険医をメインキャラクターに据える作品は少ない。学園モノの漫画でも、どうしてもお色気要員にされてしまったり、出てこない場合も多かったりする。

 

そんな漫画界において、「保険医」にフォーカスを当てた漫画が存在する。

藍本松著『保健室の死神』である。

www.s-manga.net

本作の主人公は、派出須逸人(はです いつひと)。職業は保険医である。

あらすじは、学園の日常生活の中で現れる、「病魔」と呼ばれる敵を派出須が退治していく、というものだ。

 

「病魔」とは何かと言うと、人々の感情から生まれ、その心の弱さに付け込む存在だ。付け込んだ人間(ここでは発症者と呼称する)の望みを様々な形で具現化させるのだが、周囲に多大な迷惑をかけ、実害が出るケースがほとんどである。

例えば、女湯が覗きたい男子生徒を透明人間(厳密には違うが)にさせたり、現実逃避したい人々を夢の世界に閉じ込めたりといったものだ。

 

この作品の面白い部分は、「病魔」という存在が「人間の心の弱い部分」から生まれ、それを「保険医」である派出須が「治療する」という構成になっている点であろう。

 

前述の文の中に「慈悲深い」という表現があったと思うが、私はこの「慈悲」というのが保険医の本質であるように思っている。

「慈悲」はもともと仏教用語であり、広辞苑によれば「一説に、衆生に楽を与えること(与楽)を慈、苦を除くこと(抜苦)を悲という」とある。患者(生徒)の苦(怪我や病気)を取り除き、楽を与える。まさに保険医の姿そのものであろう。

今まで保健室に行ったことがある人ならば、ちょっとした怪我でもやけに大げさに心配され、過剰とも言える治療を受けた経験があるのではなかろうか。本作の派出須もそのようにして患者である生徒と接する場面が多くみられる。それは保険医の持つ大いなる「慈悲心」によるものであると私は考えている。

しかし、それは保険医でなくとも、他の医者でも同じではないか? と思われる方も多かろうと思う。ただ、保険医はただ怪我をした生徒を治療すればいいだけではない。

 

保険医は、生徒の心のケアまで行っている。

皆さんも保健室登校なんて言葉を聞いたことがあると思うが、要は心が不安定な状態の子供たちのカウンセリングも行っているわけだ。傷がつくのはなにも体だけではない。

通常の医療業務に留まらず、メンタルケアも担当されている保険医の方々にはまったく頭の下がる思いである。

 

私はその「保険医とカウンセリング」というテーマに重きを置いた『保健室の死神』が、もっと評価されてほしいと思っている。舞台が中学校ということもあって、多感な時期の子供たちの持つ悩みと、それに向き合う保険医の姿がとてもよく描かれている。

この作品の特徴として挙げられる点として、「病魔」を派出須が倒すためには、まずその悩みの元と発症者自身が向き合い、発症者が「病魔」を不要だと判断しなければならないというものがある(安田という例外もいるが)。この部分がなければただの学園バトルものになってしまうところだが、藍本氏はそこをないがしろにしなかった。

うつ病の患者に対して、「はい、うつの原因を倒しました。あなたはもう元気!」なんてやってたら興ざめもいいところである。しっかりと患者自身が「もううつ病じゃない!」と言える状態になって、はじめて根本の原因を倒すという構成になっているのが、この作品の最も評価すべき点であろう。

 

他にも、派出須とは別の心理カウンセラーが学校に赴任した回などは、心理カウンセリングについて深く考えさせられるものになっている。生徒以外の大人の悩みも多く取り上げられているので、社会人の皆様も自分の悩みと重ねられる「病魔」を宿す人間が登場する回もあるかと思われる。

 

以上の点を踏まえて、ぜひとも手に取っていただきたい作品である。全10巻と巻数もそこまで多くないので、イッキ読みもしやすいだろう。

 

 

最後になるが、癒月ちょこ氏もゲストとともに視聴者の悩み相談に答える、いわばカウンセリング配信をたびたび行っている。何か悩みのある方は次回行われた際にお便りを送ってみてはいかがだろうか。


【Vtuber】猫と悪魔のお悩み相談室【猫又おかゆ/癒月ちょこ/ホロライブ】

ASMR配信が大変な好評を博しているちょこ氏だが、その動画の影響か、先日まで収益化が無効になってしまっていたために現在録画は残されていない。転載動画がアップされているかもしれないが、くれぐれもそちらは視聴しないように。本人の配信を待とう。

それから、ボイス販売でもASMRのものがあるので、気になる方はそちらをチェックしてみてはいかがだろうか。特に現在バレンタインボイスが発売されているので、リアルでチョコを貰う機会のない方は、ちょこ氏からバレンタインのプレゼントを貰うのもいいだろう。

収益化も復活したこれから、保健室の小悪魔であるちょこ氏には超!超!GOOD 超!ハッピーに頑張っていただきたい。

 

さて、私の今年のバレンタインチョコは自分で買ったブラックサンダーであった。でもいいんだ。だってブラックサンダーは美味しいんだから。咀嚼、完了……。

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